先日、久しぶりに夜の街へと出かけたんですよ。
といっても、クラブでもバーでもなく。
目的地は一軒の古びた立ち飲み屋。
看板には達筆な筆文字で「角打ち」と書かれ、
中からはサラリーマンたちの笑い声と、
昭和の香りがする焼き鳥の煙がもくもくと。
その中に、
ひとりだけ場違いなオーラを放つ紳士がいたんですよ。
スーツのシルエットが完璧すぎる。
腕元のロレックスがさりげなく光る。
まるで「ウイスキー版・ゴールドマン・サックス」。
僕がチビチビと角ハイを飲んでいたら、
その人がふとこちらを見てニヤリと笑った。
「若いの、ウイスキーってな……投資に似てるんだよ」
……急に来た。
何が始まるのかと身構えた瞬間、
その人の前に置かれたグラスの琥珀色が
ネオンに照らされてキラリと光った。
どうやら、
この夜はただの立ち飲みでは終わらないようです。
ウイスキーは“待つ者”の飲み物である。
ウイスキーの魅力って、
結局「時間」なんですよね。
樽の中で眠ること10年、20年、30年。
焦って火を入れたら台無しになるし、
寝かせすぎても香りが抜けてしまう。
つまり、
焦ったら負け。
寝かせすぎても負け。
どこかで聞いたことがあるようなこのバランス、
そう――**投資とまったく同じ。**
相場が少し上がっただけで売りたくなる人。
含み損が出た瞬間に逃げたくなる人。
そんな心の動きが、
まるで熟成途中の樽の中で落ち着かないアルコールみたいなんですよ。
ウイスキー職人は、
たとえ樽の中の液体がまだ“青い”とわかっていても、
じっと待つ。
香りが育ち、色が変わるその日まで。
それができる人こそ、
最終的に「マッカラン」を作るんです。
“買う瞬間”より“寝かせ方”が9割。
世の中には「買った瞬間に儲けが決まる」なんて言葉がありますが、
ウイスキー投資にも同じことが言えるんですよ。
例えば、サントリーの『山崎18年』。
定価は3万円前後だったのに、
今ではオークションで20万円を超えることも。
でも、最初に買った人が全員勝てたわけじゃない。
何年も埃をかぶらせ、
「まだ飲まない、まだ売らない」と我慢した人だけが勝った。
つまり、
大事なのは買う瞬間じゃなくて、
**“どう寝かせるか”**なんです。
株式でも、仮想通貨でも、
短期の値動きで一喜一憂しているうちはまだ仕込み段階。
焦らず、騒がず、じっと待つ。
その静かな時間こそが「熟成期間」。
言い換えれば、
チャートを見て胃がキリキリするうちは、
まだアルコール度数が高すぎるってことですね(笑)
“香り”を読む、それが投資家の嗅覚。
ウイスキーを嗜む人って、
飲む前に必ず香りを確かめますよね。
スモーキーなのか、フルーティーなのか、
あるいはピートの香りが強いのか。
実はこれ、投資にも同じことが言えるんですよ。
数字だけを見て判断する人は、
「アルコール度数」だけを気にする飲み方。
でも、香り=市場の“空気”を読める人は、
その後の変化を先に嗅ぎ取る。
だからこそ、成功する投資家って
どこか“鼻がいい”んです。
ニュースの見出しに踊らされず、
チャートの奥にある“人間の心理”を嗅ぎ取る。
まるでアイラ島の潮風を嗅ぎ分けるように。
そう考えると、
投資家ってウイスキー職人と似てるんですよね。
どちらも“匂い”で未来を読む。
“酔い”と“冷静さ”の間に、答えがある。
とはいえ、
どんなに知識を詰め込んでも、
酔えばすべてが無駄になる。
ウイスキーは、
ちょっと飲みすぎた時にこそ本性が出るんですよ。
「お前、投資うまそうだなぁ!」
と、初対面の人に絡んで損切りを語り始めたあの夜。
翌朝の財布は軽く、心は重く。
つまり、
**冷静さを失った瞬間、人は必ず損をする。**
これはチャートにもバーにも通ずる真理。
ほんの一杯の油断が、
ほんの一クリックの誤差が、
人生の味を変えてしまう。
けれど、それでもまたグラスを手に取るのが人間。
それこそが、
この苦くて甘い世界の楽しみ方なのかもしれません。
そしてオチ。
例の立ち飲みの紳士。
あの夜の話を締めくくるように、
最後にこう言い残して帰っていきました。
「若いの、ウイスキーも投資もな……
“いい香りがしてきた頃に、手を出すな”ってことだ。」
僕はその言葉を聞きながら、
氷の溶けたハイボールを見つめて思いました。
――人間って、
ほんとに、
学習しない生き物だなって(笑)
そんなことを思いながら、
今日も僕は冷凍庫の角瓶を見つめております。
ウイスキーも投資も、焦るな。
「熟成」がすべてを変える。

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