洗車とは男の試練なのだ

 

あれはつい先日の事。

いつも通りコンビニの駐車場でコーヒーを飲みながら、ぼーっとしていたんですよ。

ふとフロントガラスに目をやると、

「・・・え、誰の車?」

と本気で思った。

そう。あまりに汚れすぎて、もはや所有者がわからないレベル。

鳥のフンがアートのように広がり、ホコリと黄砂のグラデーションが夕日に映えていたのです。

さすがに我が愛車も泣いていた。

そんな惨状を見て、ついに決意したのです。

「よしっ、今日は久々に洗車するか・・・っ!」

と。

しかし、僕は知っている。

洗車とは、男の試練であり、悟りへの修行であることを・・・。

1.ホースの神、襲来

いざ洗車場に到着。

両替機で小銭を握りしめ、ホースを手に取り、いざ勝負の時。

・・・のはずが。

蛇口をひねった瞬間、ホースが暴れ馬のように暴走!

僕の腹部を直撃し、まるで新手の水遁の術。

気づけば全身びしょ濡れで、通りがかりのおばあちゃんが遠巻きに笑っている。

いや、笑うな。これは儀式なのだ。

洗車とは、己の尊厳を犠牲にして車を救う儀式。

「濡れるのは車じゃない、魂だっ!」

そんな名言を心の中で叫びながら、僕は再びホースを握りしめた。

ただの洗車なのに、気持ちはすでに少年漫画の最終決戦。

2.泡と格闘、そして悟り

シャンプーを泡立て、スポンジでボディを磨いていく。

すると、愛車のボディがどんどん蘇っていくではないか。

泡が流れるたび、まるで数年ぶりに風呂に入った猫のような清涼感。

「これぞ人間とマシンの共生・・・」

そう呟いたその時、近くにいた少年が母親にこう言った。

「ママ、あのおじさんずっと車に話しかけてる・・・」

違うんだ少年。

車というのは、磨けば心が通うんだ。

たとえそれが周りから見れば独り言にしか聞こえなくても。

「車は鏡、己を映す存在なのだ・・・っ!」

(※決して怪しい宗教ではありません)

その後、タイヤまでピカピカにして気分は最高潮。

全身泡まみれでニヤニヤしている僕を、通りすがりのカップルがドン引きしていた。

でもいいのです。

悟りとは孤独の中にこそあるのです。

3.終わりなき戦い、そしてオチ

全てを洗い終え、タオルで仕上げていたその時。

ふと空を見上げると、遠くの雲がどんよりと・・・。

嫌な予感。

そして、10秒後。

天から滝のような雨が・・・っ!

洗い終えたばかりの車に、まさかのスコール直撃。

僕は立ち尽くし、雨に打たれながら呟いた。

「これが・・・人生か・・・っ!」

ただの洗車が、ここまで人間ドラマを描けるとは思ってもみなかった。

びしょ濡れの中、運転席に座り込みエンジンをかけた瞬間。

ワイパーがシュッ・・・と動いた。

その音がまるでこう言っているように聞こえた。

「まぁ、また今度がんばれよ」

・・・うん。

次は晴れた日にしよう。

「洗車とは、報われない愛の美学である」

そう感じた、ある日の午後でした。

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