サッカーW杯を何倍も楽しむコツ

今日はちょっとした日常の瑣末な出来事から始めましょう。
数日前の夜、僕はリモコン片手にテレビの前で座っておりました。
その時、家の冷蔵庫を開けたらビールが一本、しかなかったのです。

「なんで一本だけ?」と問いただしたら、
嫁がにやりと笑って、こう言いました。

「あなた、今回は節制して観てね」

その一言で僕の心の準備は一気に整いました。
なぜなら来年のワールドカップで日本の対戦国が決まった直後、
僕は既に頭の中で勝利の祝杯と敗北の慰めを同時にシミュレーションしていたからです。
テレビの前で一喜一憂する自分と、冷蔵庫の中身を管理する現実が、
その夜、奇妙に交差したわけでございます。

この前フリは単なる家族の雑談ではありません。
試合の組み合わせが発表された瞬間から始まる、
我々の観戦文化の話へと自然につながるのです。
では本題に入ります。

 

① 観戦は儀式である、そして酒はその装置である

サッカーの大舞台を前にして、我々日本人は勝手にルールを作ります。
ユニフォームを着る、国旗を飾る、選手の背番号に合わせたおつまみを用意する。
ちょっと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、
この「儀式」があるからこそ、試合は単なる90分ではなくなるのです。

儀式にはテンポがあり、リズムがあり、終わりの合図が必要です。
その終わりの合図を演出するのが酒であって、
酒はテンションを増幅させる装置として機能します。

勝ったら乾杯、引き分けならため息を一杯、負けたら慰めの一杯。
それは単なる飲酒行為ではなく、感情の外在化なのです。
(どっちにして飲むんじゃないか!と言う突っ込みはナシね)

なので対戦相手が強豪であればあるほど、
儀式のバリエーションも増える。
たとえば強豪国相手なら、試合前に複数種の酒を用意し、
ハーフタイムではネタ系のつまみ、後半はガチのスナックへと移行する。
これは戦略であり、自己防衛でもあり、観戦を最大化するための準備なのです。

そして忘れてはならないのが家族とのバランスです。
儀式を盛大にやりたくても、家の雰囲気を壊しては元も子もない。
そこに嫁の一言が介入するのは極めて合理的です。
「ビール一本だけ」という小さな管理は、
結果的に家族の平穏と夜の秩序を守るための知恵なのです。

 

② 対戦相手の顔ぶれで酒の買い方が変わる、これが観戦プロの流儀

抽選の瞬間に表示される国名を見て、我々は無意識に計算をはじめます。
フォワードの個人能力、ミッドフィールドの運動量、守備ラインの高さ。
それらを頭の中で足し算・引き算して、試合のスコアを予測するのです。
その予測に基づいて酒の種類、量、ペース配分を決める。
これが我々の暗黙のルールなのです。

例えば格上と当たった場合、
試合は終始守備的になる可能性が高いと踏めば、
集中力を保つための「飲み過ぎない」戦略を採ります。
逆に同ランクか格下と思えば、攻めに転じる時間帯が増えると予想して、
ハーフタイム以降にペースを上げる準備をするわけです。

ここで重要なのは「飲む量」だけではありません。
何を飲むか、どのタイミングで飲むか、誰と飲むか。
これによって試合中の感情の流れが変わります。
僕は過去の教訓から、重要な初戦では缶ビールの在庫を余裕を持って確保する派です。
しかしそれを嫁に知られると、冷蔵庫管理の厳戒態勢が発動されます。

試合観戦とは、単にサッカーを観る行為ではなく、
家族との駆け引きと自己コントロールの複合イベントなのです。
抽選会で対戦国が決まる瞬間、我々はもう観戦の設計図を描き始めているのですよ。

 

③ 観戦当日のリアルな振る舞い、そして最後に来る小さなオチ

試合当日になると、準備は最終局面に入ります。
テレビの位置、座る位置、スマホの充電、トイレの順番。
これらすべてが勝敗に微妙に影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
試合の流れを見据え、交互にトイレに行くタイミングや、料理を出すタイミングを決め、
負けたときのフォローのセリフまで用意する。

これだけ準備しても、人間の感情は予測不可能です。
ゴールが入った瞬間の雄叫び、VAR判定で固まる沈黙、PKでの胃の痛み。
そのすべてを受け止めるのが観戦仲間であり、家族であり、酒です。
酒は感情のクッションであり、同時に演出の小道具でもあります。

・・・そして話は最初の前フリに戻ります。

僕の冷蔵庫にビールが一本しかなかったあの日、
嫁は単に家計の無駄を省いたわけではありませんでした。
あれは一種のリスクマネジメントであり、家庭円満のための小さな防波堤。
僕が試合中に暴走しても、ビール一本しかなければ被害は最小限で済む。

つまりですね、最後のオチはこういうことです。
対戦国が決まって一気にテンションが上がる我々を、
家庭の知恵がやさしく抑え込む。
それが家族というスタジアムの真の強さなのです。

 

日本が勝てば、家での勝利の法則も変わる。

 

最後にもう一度だけ。
抽選会で組み合わせが決まった瞬間から、我々の観戦は始まっています。
戦術だけでなく、酒と家族と儀式の設計まで含めたトータルなエンタメこそが、
W杯を何倍も楽しむコツなのですよ。

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